金田一シリーズの事件ごとの感想動画。今回ピックアップするのは、コチラです!「電脳山荘殺人事件」【1】作品のあらすじ金田一くんと美雪ちゃんは、スキー場へのお出かけの準備をしていました。剣持のオッサンが誘ってくれた旅でしたが、正月早々、事件に巻き込まれてしまい、今回は同行できませんでした。仕方なく2人で向かった先にあったのは、「ロッジ・シルバーウッド」と呼ばれる山荘。そこでは、パソコン通信を通じて集まった仲間たちが、初めてのオフ会を開いており、思わぬ出会いや出来事が待ち受けていたのです。【2】事件の主なポイント電脳山荘の事件の中心には、パソコン通信を通じて知り合ったメンバーたちの人間関係があります。ノベルズ版が発表された1990年代半ばでは「パソコン通信」が使われていましたが、考え方の本質としては、現代のインターネットやSNSと似たようなものと考えて差し支えありません。シルバーウッドに集まったメンバーは、パソコン通信内で「電脳山荘」というグループ名を持ち、ハンドルネームで呼び合っていました。オフ会開催まで、互いに面識はありませんでした。メンバーは、商社セールスマンでリーダー格の「僧正」、女子高校生の「アガサ」、医者の「ワトソン」、パンクミュージシャンの「シド」、漫画家の「ぱとりしあ」の5名に加え、後から到着予定の大学生「乱歩」と「スペンサー」がいます。ここで少しだけ触れると、この電脳山荘の事件の犯人は「琢磨」という人物です。ただし、これを伝えるだけでは小説の中でも動画の中でも犯人は明かされておらず、ノベルズ版としての最大の見どころの一つになっています。(ポイント1)アリバイと「トロイの木馬」からの電話第1の事件は、電脳山荘のメンバーがそれぞれのコテージで思い思いの時間を過ごしていた最中に発生しました。事件後、犯人「トロイの木馬」は各コテージに電話をかけ、金田一くんのコテージには「犯人は乱歩かワトソンのどちらか」と挑発的に告げるなど、意図的にメンバーを翻弄してきました。この事件のポイントとなるのは、パソコン通信のチャットのログアウト時刻です。この記録を基に、アリバイの検証が行われ、金田一くんの推理に、初めて顔を合わせた電脳山荘のメンバーたちも協力する姿勢を示しました。検証の結果、第1の被害者を除くほとんどのメンバーは、複数名でチャットをしていたり、一緒にコテージ内で過ごしていたことが確認されました。しかし、たった1人のメンバーだけは例外でした。(ポイント2)最後の言葉の理由と認識のズレ第2の事件は、第1の事件を経た後、全員がコテージに集まる直前に発生しました。この事件で注目すべきは被害者の最後の言葉で、「ぱ」「と」と表記されていました。このため、物語の途中では「ぱとりしあ」が疑われる場面もありました。しかし、第2の事件までの段階で、第2の被害者とぱとりしあが顔を合わせたシーンはあったでしょうか。この「ぱと」という言葉の意味や、被害者がその言葉を残した意図や理由も、事件の重要なポイントとなります。そして第3の事件では、夜が明けたときにある人物が雪の下から発見されました。身分証明書には「飯田」という名前が記されており、この人物の登場が今後の展開やアリバイの検証に大きく影響を与えます。第2、第3の事件で特に重要なのは、電脳山荘のメンバーの認識です。小説の読者も、初見ではここで巧妙に騙される構造になっています。情報を整理すると、コテージに集まっていたのは僧正、アガサ、ワトソン、シド、ぱとりしあの5人で、乱歩とスペンサーは後から遅れてくることになっていました。しかし、その認識の背後には、犯人の巧妙なトリックが仕込まれていたのです。物語を読み進める際に、「誰が誰のことをどう認識していたか」を注意深く考えると、第2の被害者の最後の言葉の意味も徐々に見えてくるはずです。(ポイント3)チャット履歴の違和感第4の事件は、第1の事件と同じくコテージの中で発生しました。この事件の描写は非常に詳細で、読んだ当初から恐怖を感じるほどで、20年以上経った今でも鮮明に記憶に残っています。小説の描写を見る限り、第4の被害者は犯人「トロイの木馬」の姿を直接見てはいないはずです。一度は犯人ではないかと疑われた第4の被害者ですが、この状況は罪を認めた最期だったのか、それとも別の理由があったのかは読み進める上で注目すべきポイントです。第4の事件の重要な鍵となるのは、パソコン通信のチャット記録です。現代で例えるなら、LINEのグループチャットの履歴やTwitterのリプ欄の履歴に相当します。金田一くんは、ある人物に関して、このチャットの履歴とオフラインでの行動との間に複数の「違和感」を見出していました。この違和感が、後の推理で犯人の正体を見抜くきっかけになるのです。【3】事件のキーパーソンやがて電脳山荘のメンバーたちは、第2の事件後もなお顔を出さない「スペンサー」に疑いの目を向け始めました。電脳山荘の事件のキーパーソンとして、私はこのスペンサーという人物を挙げたいと思います。スペンサーは本当に事件の犯人「トロイの木馬」なのか。そして、スペンサーこそが「琢磨」という人物だったのか。それは真相編で明らかになるのですが、結局のところスペンサーに関する認識が、電脳山荘の事件のアリバイトリックに大きな意味を持っていると言えるでしょう。メンバーのスペンサーに対する認識、そしてスペンサーから見た周囲のメンバーに対する認識も、このトリックの仕組みに少なからず関係しているのです。【4】まとめ(感想/残った謎/今後に繋がりそうな話)2022年の年明け頃、金田一少年の事件簿のドラマ化が発表されて以来、この「電脳山荘の事件」もドラマ化が強く望まれている事件の一つです。原作では「パソコン通信」が舞台となっていますが、現代のSNSやオンラインサロンなどのコミュニティを舞台に置き換えても違和感は少ないでしょう。また、「雪山で周囲の助けが得られない」という状況も、たとえば「山道が落盤で塞がれた」などの設定に変えれば季節に左右されることもありません。電脳山荘のメンバーたちは、ハンドルネームで自分を隠し、華やかなプロフィールで着飾っている一方で、日々の生活では「つらさ」や「息苦しさ」を抱えている人物が多く描かれています。その描写が、読者を巧みにミスリードする要素にもなっており、事件の面白さの一つと言えるでしょう。事件の動機となった出来事は、メンバーたちが始めた「ある出来事」でした。しかし、ほとんどのメンバーは決定打を与えたとは言い難く、偶然の条件が重なった結果として悲劇が起きたことが示されています。顔の見えない相手同士のやり取りの中で起きた不幸な偶然が、事件の背景にあったのです。改めて小説を振り返ると、金田一くんが犯人を断定する際の物的証拠は他の事件よりやや弱めで、最終的には犯人の自白が前提になっています。もし犯人が頑なに「自分ではない」と主張し続けた場合、どうなっていたか想像させられます。それでも、剣持のオッサンが担当していた事件の手がかりと結びつけば、犯人は認めざるを得なかった可能性が高いです。また、事件が起こるコテージに向かう前、金田一くんは美雪ちゃんと吉祥寺で買い物をしていました。原作では吉祥寺付近の地名が度々登場し、聖恋島や金田一二三誘拐事件などでも重要な舞台となっています。金田一くんの住む不動山市は、吉祥寺の近くにある設定かもしれません。さらに、メンバーがハンドルネームを使っているため、一部の場面では本名の一部が文章中に描かれています。小説では誰の話か瞬時に判断できないため、読者は「この名前はあのハンドルネームの人物の本名かな?」と推測できます。ここに電脳山荘のトリックの巧妙さが表れており、もしドラマ化される場合は、ハンドルネームと本名の対応をどのように表現するかが大きなポイントになりそうです。視覚・聴覚のメディアで表現する際には、うまく処理しないとトリックが一瞬でバレてしまうリスクもあります。