「金田一少年の事件簿」「金田一37歳の事件簿」の事件を改めて読み返し、感想や気になったポイントを紹介するシリーズ。今回ピックアップするのは、記念すべき最初の事件――「オペラ座館殺人事件」です。原作『金田一少年の事件簿』の第1の事件であり、金田一一、美雪、剣持警部、そして後のシリーズにもつながっていく要素が、最初からたくさん詰め込まれています。特に改めて読み返してみると、「こんなところにも後の金田一らしさがあるのか」と感じる場面も多くありました。※この記事では、事件の真相に関するネタバレを含みます。あらすじ七瀬美雪をはじめとする不動高校演劇部のメンバーたちは、全国高校演劇コンクールを控え、孤島にあるオペラ座館へ合宿に向かいます。ところが、コンクールを目前にして3人の退部者が出てしまったため、急遽、美雪の幼馴染である金田一一も音響係として手伝いに駆り出されることに。しかし、オペラ座館に到着した演劇部のメンバーには、どこか重い空気が漂っていました。かつての部員の名前が出た途端、表情を変える人物までいます。その背景にあったのが、亡くなった元演劇部員・月島冬子をめぐる出来事。そして、孤島という閉ざされた舞台で、ついに殺人事件が起こります。事件の大きな特徴「オペラ座館殺人事件」は、後の『金田一少年の事件簿』につながる要素が非常に多い事件です。劇場を舞台にした特殊な殺人「オペラ座の怪人」を思わせる演出密室状況犯人につながる細かなミス過去の出来事が現在の事件につながる構成犯人の動機と悲劇的な結末そして何より、「金田一少年の事件簿とは、こういう作品です」という基本的な型が、最初の事件からかなり明確に示されているように感じます。事件の3つのポイント① 音が聞こえない「緞帳」の向こう側第1の事件は、夕方の劇場で発生します。食事の席に現れなかった人物を探すため、演劇部のメンバーたちがそれぞれ別れて捜索。そのとき、突然劇場から「ジリリリ」という開幕のベルが鳴り響きます。不審に思った金田一たちが劇場へ入ると、そこには落下した照明機器と第1の被害者の姿がありました。現場で重要になるのが、照明器具を支えていたワイヤーが故意に切られていたこと。さらに、この事件の後に黒沢が名前を出したのが、金田一たちが訪れる前日にチェックインしていた謎の人物・歌月です。歌月は顔を包帯でぐるぐる巻きにしており、部屋を荒らしたうえ、謎のメッセージを残してオペラ座館から逃亡。クルーザーのロープまで切って姿を消しています。「歌月が犯人なのでは?」と思わせる展開ですが、ここで改めて注目したいのが、現場に降りていた緞帳です。美雪と緞帳を上げ下げして確認したところ、緞帳が下りている状態では、舞台からスピーカーの音が聞こえませんでした。第1の事件では、こうした「音が聞こえる・聞こえない」という状況が、事件の真相を考えるうえで重要なポイントになっています。② 密室状態を示す「足跡」第2の事件が起こった頃、仮面をかぶった謎の人物が、美雪の部屋を外からのぞいていました。夢なのか現実なのか分からず混乱する美雪。そして翌朝、第2の被害者が木の下で発見されます。ここで気になるのが、「どうやって、台も使わずにあんな高いところへ?」という点。しかも金田一は、この現場を見て「密室」だと判断します。現場には、被害者の足跡しか残されていないぬかるみ。さらに部屋の鍵は内側からかけられていました。そして事件後、演劇部のメンバーたちは、2つの事件が「オペラ座の怪人」そのものを思わせる形で行われていることに気づきます。その少し前には、演劇部の道具であるファントムの仮面やボウガンなどがなくなっていました。これらの道具が、後の事件にどうつながっていくのかも見どころです。③ 咄嗟の状況で残してしまった「ミス」第3の事件は音響室で発生します。第3の被害者が見つけたのは、まるい形をした「あるもの」。ここで面白いのが、読者には音響室で何が起こっているのかを見せながら、金田一たちには「浴槽で起きた事件」に見せようとしているところです。犯人は何かを隠そうとしていました。しかし、最終的には金田一に見破られてしまいます。第3の事件が発生したことで、演劇部のあるメンバーは特に怯えるようになり、そしてついに、オペラ座の怪人=ファントムが金田一たちの前に姿を現します。ところが、逃走したファントムの足跡が向かった先は、なんと窓の向こう。「これで事件は終わった」と思う演劇部のメンバーたち。しかし、金田一はそう考えていません。ここで注目したいのは、「ファントムが逃走した後、誰が・どんな状態だったのか?」という点です。犯人の行動だけではなく、事件直後の登場人物たちの様子にも注目すると、別の見え方がしてきます。事件のキーパーソン黒沢和馬オペラ座館のある歌島を出て、船で金田一たちを迎えに来た人物が黒沢和馬です。黒沢は、この事件だけの登場人物ではありません。そのため、改めて読み返すと色々と考えてしまいます。例えば、この時点ですでに第3の事件につながる出来事が起こっていたのでは?黒沢の娘の存在には、どんな意味があるのか?後の「歌島リゾート」と舞台がつながっているのでは?といった点です。オペラ座館の岬には、4年前に亡くなったという黒沢の娘の墓があります。この岬が、『金田一37歳の事件簿』の歌島リゾートで、金田一とまりんが追い詰められる「あの場所」と同じなのかも気になるところです。%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2FRon-OkgYGfE%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3Eまた、黒沢の娘は4年前の時点で21歳。もし健在だったなら、オペラ座館・第3の事件に関係する「あの人物」と、それほど年齢が離れていないのではないか――という点も、個人的には気になります。※ここは作品内で明確に示されている事実というより、読み返して感じた疑問・考察です。読み返して感じたこと・気になったポイントオペラ座館は「高遠」につながる舞台なのか?黒沢によれば、オペラ座館は明治時代の資産家の別荘だったとのこと。『金田一少年の事件簿』では、その後も「資産家が建てた建物」「改修された建物」など、事件の舞台となる建物にまつわる設定が登場します。なかには、高遠遙一との関係を連想させるような描写もあります。そう考えると、コミックス第1巻の段階から、高遠の存在をどこかで意識した設定があったのだろうか?ということも気になります。もちろん、ここは後から読み返したからこそ感じる部分でもあります。「取り壊す」と言われたオペラ座館もう一つ気になるのが、オペラ座館のその後です。事件後、剣持のオッサンが金田一たちに、「明日取り壊すそうだ」と話しています。ところが、その後もオペラ座館は事件の舞台として登場します。「取り壊し」が中止になった事情について、どこかで描かれていたのでしょうか。見落としているだけなのか、それとも特に説明されていないのか。このあたりも、改めて気になりました。美雪ちゃんは、最初から演劇部だったオペラ座館の時点では、美雪は不動高校演劇部に所属しています。その後はミステリー研究会に所属し、さらには生徒会長を務めながらミス研の部長までやることになります。こうして最初から読み返してみると、美雪の課外活動への貢献はかなりすごいですよね。そして、もう一つ気になるのが、「そもそも、オペラ座館を合宿先に選んだのは誰なのか?」ということです。当チャンネルの見解としては、七瀬美雪だったのではないかと思っています。理由は、他の演劇部員たちがオペラ座館を初めて見たようなリアクションをしている一方で、美雪だけは、「驚くのはまだ早い」「こっち来て」などと話し、オペラ座館の特徴をある程度把握しているように見えるからです。布施や早乙女といった先輩たちまで初めて見るような反応をしているのに、美雪だけが知っている。そう考えると、美雪がオペラ座館を手配・予約したのでは?という仮説も出てきます。もしそうだとすれば、『金田一少年の事件簿』だけで3回も訪れることになるオペラ座館に、金田一たちが事件へ巻き込まれるのは、ある意味で運命だったのかもしれません。緒方先生は、なぜ金田一のIQ180を知っていた?演劇部顧問の緒方夏代にも気になるところがあります。彼女は金田一の能力の高さを見抜いていました。ただ、第1話の描写を見る限り、緒方先生が金田一のクラス担任というわけでもありません。しかも、美雪を含めて金田一のIQ180を知らない人物が多い中で、なぜ緒方先生だけが金田一の能力を知っていたのか?という疑問が残ります。第1話だからこそ設定された情報なのか、それとも何か背景があったのか。細かい部分ですが気になります。金田一の「マジック好き」も最初から描かれていた金田一がトランプやマジックに詳しいという設定も、最初の事件であるオペラ座館から描かれています。そして、このマジックに関する知識は、その後の事件でも何度も登場します。例えば、マジシャンズ・セレクト困難の分割など、マジックの考え方そのものがトリックのヒントになるケースもあります。そう考えると、「金田一=推理だけでなくマジックにも詳しい」というキャラクター性も、最初からしっかり用意されていたのだと感じます。金田一一の「不動高校での知名度」が気になる細かいところにツッコミを入れてしまうなら、金田一の学校内での知名度も気になります。1学年上の演劇部部長・布施光彦は、金田一について、「グータラでアホなダメ男で有名」という、かなり厳しい評価をしています。ところが、同学年の日高織絵は、金田一の苗字すら分かっていない様子。これは、「布施は男子だから金田一のことを知っていた」ということで片付けていいのでしょうか。学校内での金田一の知名度が、人物によってかなり違っているのが面白いところです。神矢修一郎の呼び方も気になる演劇部2年の照明係兼役者、神矢修一郎にも注目してみました。オペラ座館では比較的地味に見えるキャラクターですが、細かく見ると気になる部分があります。例えば、神矢は美雪のことを、「美雪さん」と呼んでいます。他の不動高校の生徒の多くが「七瀬さん」と呼んでいる中で、神矢だけは下の名前で呼んでいる。一方で、神矢が顔写真を本に挟んでいるほど大切に思っていた月島冬子については、「月島さん」と苗字で呼んでいます。美雪を下の名前で呼ぶこと自体は、それほど不自然ではないのかもしれません。ただ、月島の写真を本に挟んでいたことまで考えると、「神矢も何かを隠しているのでは?」と読み返したくなります。剣持のオッサン、ここから始まった!そして、「オペラ座館」といえば、剣持のオッサンの初登場回でもあります。金田一と初めて対面した食堂のシーンでは、金田一のことを「そこのガキ」と呼んでいます。それに対して金田一も、「やっなヤロ~!!」と反発。現在の2人の関係を知っている状態で読むと、この初対面の距離感はかなり面白いです。また、この剣持と金田一の関係性が、後のドラマ版で描かれる2人の関係にも影響しているのではないか、と考えてしまいます。特に、亀梨和也さんが演じた第3代ドラマ版の金田一と剣持の関係性を思い出すと、少し興味深いところです。剣持と結城医師は、なぜオペラ座館に来たのか?細かいところでは、剣持のオッサンや医師の結城英作が、そもそもどういう経緯・理由でオペラ座館に来ていたのか?という点も気になります。事件そのものとは直接関係しない部分かもしれませんが、こういう「登場人物がなぜここにいるのか?」という背景を改めて考えるのも、長期シリーズを読み返す面白さだと思います。第2の事件のトリックは、本当に解けたのか?個人的に少し気になったのが、第2の事件です。この事件では、トリックに使われた「ある物の痕跡」が、真相編になって初めて明らかになります。現在では、ドラマアニメ『犯人たちの事件簿』などでも知られている「オペラ座館」の事件。だからこそ、今読む読者たちは真相を知った状態で読めます。でも、もし何も知らない、完全にまっさらな状態でこの作品を読んでいて、最後まで「ある物の痕跡」が明かされなかったとしたら――。本当に第2の事件の謎を解くことができたのだろうか?そんなことも考えてしまいます。「金田一少年の事件簿」の基本形が、最初からある「オペラ座館殺人事件」は、後に続く事件の「型」のようなものを、かなり明確に示しているように感じます。例えば、おおむね3件ほどの事件が発生する動機となった出来事を主導した人物が、真相編まで残ることがある犯人が当初予定していなかった人物まで手にかけることがある犯人が最後に迎える結末も重要な意味を持つといった要素です。もちろん、すべての事件がこの形になるわけではありません。それでも、「金田一少年の事件簿」という作品の基本的な構造が、第1の事件からかなり完成されているように感じます。犯人は1か月間、どこで寝泊まりしていた?最後に、かなり素朴な疑問です。真相編で剣持のオッサンが説明しているところによると、犯人は事件が起こるまでの約1か月間、アパートにほとんど戻っていなかったという話があります。となると、「じゃあ、どこで寝泊まりしていたの?」という疑問が出てきます。高校生が1か月近くアパートに戻っていない。実家なのか。それとも別の場所なのか。事件のトリックや動機とは直接関係のない、本当に素朴な疑問ではありますが、改めて読み返すと妙に気になるポイントです。まとめ「オペラ座館殺人事件」は、『金田一少年の事件簿』の記念すべき最初の事件。改めて読み返してみると、単に「最初の事件」というだけではなく、その後の金田一シリーズにつながる要素が非常に多く詰まっている作品だと感じました。特に印象的だったのは、緞帳と音を利用した第1の事件足跡と密室がポイントになる第2の事件咄嗟のミスから真相に近づく第3の事件「オペラ座の怪人」をモチーフにした演出月島冬子をめぐる過去黒沢和馬や娘にまつわる設定美雪が合宿先を知っていた理由金田一のマジック好き剣持のオッサンとの初対面後のシリーズを知っているからこそ気になる細かな描写などです。そして何より、「オペラ座館」がその後も何度も金田一シリーズに登場することを考えると、第1話の段階からこの舞台を読み返す意味はかなり大きいと思います。『金田一少年の事件簿』を最初から読み返すことで、当時は気づかなかった伏線や設定、後の作品につながっているように見える部分が見つかる。そういう意味でも、「オペラ座館殺人事件」は、今改めて読むとかなり面白い事件だと思います。%3Ciframe%20width%3D%221280%22%20height%3D%22720%22%20src%3D%22https%3A%2F%2Fwww.youtube.com%2Fembed%2F7HZeAdHeAKg%22%20frameborder%3D%220%22%20allow%3D%22accelerometer%3B%20autoplay%3B%20encrypted-media%3B%20gyroscope%3B%20picture-in-picture%22%20allowfullscreen%3E%3C%2Fiframe%3E