「金田一少年の事件簿」事件の感想シリーズ。今回取り上げるのは、「ゲームの館殺人事件」です。遊園地に遊びに来た金田一一と美雪。ところが、ひょんなことから廃病院のような建物へ連れて行かれ、そこに集められた人々とともに、謎の「ゲーム」に参加させられることになります。今回の記事では、そんな「ゲームの館殺人事件」のあらすじや事件のポイント、キーパーソン、そして原作を読み返して感じたことをまとめていきます。※この記事では、事件の真相に関するネタバレを含みます。「ゲームの館殺人事件」のあらすじ遊園地から始まる奇妙な事件美雪や草太、ほかの懐かしいメンバーたちと一緒に遊園地へやってきた金田一。しかし、いくつかの偶然が重なったことで、金田一と美雪は2人きりになってしまいます。宿まで約1時間の道のりを歩いて帰ることになった2人でしたが、途中で激しい雨に降られてしまいます。さらに、美雪が足を挫くというアクシデントまで発生。そんな2人の前に現れたのが、1台のバスでした。ところが、そのバスが2人を連れて行った先は、麓の宿ではありません。待っていたのは、まるで廃病院のような建物でした。目を覚ますと、全員が仮面をかぶっていたその建物に集められていたのは、金田一や美雪を含む数名の人物。そして、金田一が意識を取り戻したとき、そこにいた全員がオモチャのキャラクターを模した仮面をかぶらされていました。しかも、その仮面は無理に外そうとすると痛みを伴うもの。困惑する金田一たちの前で、午前0時を告げる時計が鳴ります。すると、謎の覆面姿で「ゲームマスター」を名乗る人物による映像が流れ始めます。こうして、参加者たちは命を懸けた「ゲーム」に巻き込まれていくことになります。事件の3つのポイント「ゲームの館殺人事件」を読み返して、特に気になったポイントを3つに分けて紹介します。ポイント①「心変わり」の真意第1のゲームは、制限時間5分以内にクイズへ答えるゲーム。出題されるのは4桁の数字や、その語呂合わせなどを利用した問題です。そして、1問につき正解した1人だけが部屋から脱出できるというルールでした。ここで非常に気になるのが、参加者のひとりに起こった突然の心変わりです。ルールによって声を出せない状況の中、その人物は金田一の掌に文字を書き、「正解を譲ってほしい」と持ちかけます。しかし、金田一はそれを拒否。そして美雪を部屋から逃がします。ところが、次の問題になると状況が一変。先ほど「譲ってほしい」と頼んできた人物が、今度は金田一に対して、「どうぞ」と、問題を解いて部屋から出るよう勧めてきます。しかし、最終的にはそこで第1の事件が発生。その人物は、はっきりとした顔すら分からないまま、第1の被害者となってしまいます。なぜ、わずかな時間で心変わりしたのか?ここで気になるのが、「なぜ、この人物は突然考えを変えたのか?」ということ。誰も自由に話せない状況だったため、誰かから入れ知恵をされた可能性も考えにくい。それなのに、たった1問の間に態度が変わっています。この「心変わり」には、事件を解くうえで重要な意味がありました。さらに細かな手がかりとして、第1のゲームステージの部屋に置かれた液晶テレビのメーカーのロゴと、物語序盤の遊園地のアトラクションにあったスポンサーのロゴが同じという点もあります。そのメーカー名は、「TECO⊥」一体、これは何と読むのでしょうか?こうした細かな部分にも注目して読み返すと、事件の見え方が変わってきます。ポイント② 3つの部屋を経て起こった事件第2のゲームステージでは、知恵の輪を外して鍵を取り出し、それを鍵穴に差し込んで脱出するというゲームが行われます。ここでも、2人以上が同時に脱出することはルール違反。その後、第3のゲームステージへ進みます。ここは給湯室と休憩スペースを兼ねたような場所で、そこには、激辛カップラーメンお湯ペットボトルのお茶熱帯魚の入った水槽などが用意されていました。しかし、舞台は廃病院。なぜ、廃病院に熱帯魚の水槽があるのか?この違和感も、後から振り返ると意味を持ってきます。そして第4のゲームステージ。かつて高級な病室として使われていたという部屋で、ついに第2の事件が発生します。「エチケット」に隠された意味第4のゲームステージで、ゲームマスターが参加者にこんなアナウンスをします。「トイレに行ったらエチケットに気をつけてくださいよ」この一言を受け、トイレに行きたがっていた参加者たちは、出入りする際の振る舞いを細かく気にするようになります。しかし、本当に注意すべきだった「エチケット」は、別のところに隠されていたのかもしれません。そして、もうひとつ気になるのが、第1の事件が起こってから、第2の事件までに3つもの部屋を通過しているということ。さらに言えば、「なぜ3つもの部屋が用意されていたのか?」という疑問も残ります。単なるゲームの舞台として用意されていたのか。それとも、犯人にとって何らかの意味や意図があったのか。そう考えながら読み返すと、各ゲームステージの存在そのものが気になってきます。ポイント③ 参加者の「人選」に意味があるこの事件を読み解くうえで重要なのが、ゲームに集められた参加者たちの身の上話です。参加者たちは、それぞれ自分の過去や好きなもの、嫌いなもの、借金などについて話しています。一見すると何気ない会話。しかし、その中には事件の背景につながるキーワードが隠されています。ちょっとした雑学を知っているだけでも、そこから真相に近づけた可能性があります。「この人たちは、なぜ集められたのか?」事件の途中から、金田一もあることに気づき始めます。参加者全員ではないとしても、少なくとも何人かについては、「犯人が意図的に集めたのではないか?」という可能性です。だとすれば、犯人は参加者たちにどんな意図を持っていたのでしょうか?そして、犯人を特定するためのヒントになりそうなのが、「これを聞いて何を連想するか?」という視点です。第5の部屋で見えてくる「おかしさ」第4のゲームステージで第2の事件が起こった後、残ったメンバーは第5の部屋へ進みます。ところが、そこである人物が異臭に気づきます。その直後、状況は大きく動き始めます。ここで注目したいのは、金田一と美雪の反応。2人がそこで見せた反応は、決して間違ったものではなかったはずです。だからこそ、そこから逆算すると、犯人の「おかしな言動」も浮かび上がってきます。事件のキーパーソン菊川梢「ゲームの館殺人事件」のキーパーソンとして挙げたいのが、菊川梢(きくかわ・こずえ)です。ただし、菊川本人には、自分が事件のキーパーソンになっているという意識はありません。それでも、「菊川梢がいなければ、この事件そのものが存在しなかったのではないか?」という意味で、僕は彼女をキーパーソンだと考えています。なぜ菊川がいなければ、この事件は起こらなかったのか。その答えについては、ぜひコミックスを読んで確かめてみてください。また、事件後の真相編では、菊川の周囲である出来事が起こります。その後についても、もし「金田一37歳の事件簿」で描かれることがあれば面白いのではないかと、個人的には期待しています。「ゲームの館殺人事件」を読んで感じたことここからは、事件の謎そのものだけではなく、原作を読み返して個人的に印象に残ったポイントを紹介します。金田一のリアクションがとにかく面白いこの事件の見どころのひとつが、金田一の多彩なリアクションです。冒頭の遊園地での、いかにも「わざとらしい」リアクションから始まり、事件の最中にもさまざまな表情を見せています。例えば、第1のゲームステージ。美雪が比較的簡単そうな反応を見せている一方で、金田一は、「い…いきなりの…難問っっ!」と顔をこわばらせています。こうした美雪との反応の違いにも注目です。剣持のオッサンとのシーンも印象的現場検証の場面で、剣持のオッサンから「エチケットの場所」を教えてもらうシーン。そこでの金田一の、「へ?」というような表情も個人的には印象に残りました。そして、ここでは美雪の逆三角形の口にも注目です。事件そのものがシリアスだからこそ、こうしたキャラクターの表情が良いアクセントになっています。真津本潤にも注目登場人物の中でも、特にピックアップしておきたいのが真津本潤(まつもと・じゅん)です。この人物については、あえて詳しく触れません。ただ、メディアによって名前や設定に違いがある点も興味深いところ。ドラマでは、この人物に相当する役を「町田和哉」として上島竜兵さんが演じ、アニメでは「杉本潤」という名前になっています。原作で「ゲームの館殺人事件」が『週刊少年マガジン』に連載されていた当時、27歳だったという点も、改めて考えるとポイントかもしれません。菊川梢との会話で見せる金田一の表情真津本潤と菊川梢のやり取りの中には、個人的に非常に印象に残っている場面があります。あるセリフに対して、金田一が枠線と眉毛、そして汗だけで複雑な感情を表現しているような描写があります。こういう細かなリアクションは、事件の謎とは直接関係なくても、「金田一少年の事件簿」らしい面白さだと思います。金田一と美雪の「絆」が試された事件「ゲームの館殺人事件」では、金田一と美雪の関係性にも注目したいところです。特に印象的なのが、第2のゲームステージ。金田一は、ある人物を庇って先に行かせます。ところが、その結果として金田一自身が部屋から出られず、ピンチに陥ってしまいます。そして、金田一に助けてもらった人物が、金田一に対して悪態をついた直後――。美雪が、その人物に強烈なビンタ。このシーンには、少しスカッとした人もいるのではないでしょうか。その後、無事に部屋から出てきた金田一が、その人物にかける言葉も印象的です。相手の神経をさらに逆撫ですることなく、状況を収めているところを見ると、金田一と美雪の関係性がよく表れている場面だったように思います。過去の事件を連想させる場面も?「ゲームの館殺人事件」を細かなシーンごとに見ていくと、過去の金田一シリーズの事件を連想させるような描写もあります。例えば、第3のゲームステージ。水槽の熱帯魚が毒によって死んでしまう場面は、「仏蘭西銀貨」の事件に登場した、あの場面を思い出す人もいるかもしれません。さらに、この第3ステージで登場する会話の中に、「ロマネコンティ」というキーワードが出てくるのも気になるところです。これも「仏蘭西銀貨」を知っている読者なら、つい連想してしまうのではないでしょうか。「異人館ホテル」や「魔神遺跡」との共通点真相編まで読み返してみると、犯人の過去という点では、「異人館ホテル」の事件を思い出す部分があります。一方、犯人のその後という意味では、「魔神遺跡」の事件と似たものを感じるかもしれません。もちろん、それぞれの事件はまったく別の物語です。だからこそ、金田一シリーズを長く読んでいると、「あの事件と少し似ているな」という発見ができるのも面白いところです。明智警視への「イジり」が濃い「ゲームの館殺人事件」で個人的にかなり好きなのが、明智警視へのイジりです。しかも、短いシーンの中に明智警視本人の自慢話まで凝縮されています。例えば、剣持のオッサンが明智警視からの電話を金田一に渡す場面。そこで剣持が明智警視のことを、「あいつ」と呼んでいるのが面白いところ。さらに真相編では、金田一が、「ちょっと法律に詳しいヤツがいてさ」と話します。すると当の明智警視は、「私は東大在学中に司法試験に合格し法律知識も少々あるのですが…」と、限られたコマのスペースの中で見事なまでの自慢話を披露します。この「ちょっと法律に詳しいヤツ」→本人による全力の自己紹介という流れが、個人的にはたまりません。犯人が求めていた「幸せ」とは?そして、真相編を読み終えて考えさせられるのが、犯人の思いの根底にあったものです。そこには、「大切な人に対して」という気持ちがあったのではないかと思います。ただし、そのために犯人が実行したことは、決して許されるものではありません。それでも、最後まで読んだときに残るのは、「幸せって、いったい何なんだろう?」という問いなのかもしれません。「ゲームの館殺人事件」のラストには、そんなことを考えさせられる部分があるように感じました。まとめ「ゲームの館殺人事件」は、命懸けのゲームという分かりやすい設定の中に、さまざまな伏線や仕掛けが詰め込まれた事件です。特に印象的なのは、第1ゲームでの「心変わり」3つの部屋を経て起こる事件参加者の人選身の上話に隠されたヒント「エチケット」という言葉菊川梢の存在金田一と美雪の絆過去の事件を思わせる描写明智警視への濃厚なイジりなど。そして、事件全体を振り返ると、単なる「ゲームを使った殺人事件」ではなく、犯人が抱えていた「大切な人への思い」と、「幸せとは何なのか」というテーマが見えてきます。事件の手掛かりをひとつひとつ拾いながら読み返してみると、初読時とは違った発見があるかもしれません。