「金田一を語る人」の今回のテーマは、「【金田一少年の事件簿】ラスト1ページが衝撃的だった事件Best3」です。はじめに金田一ファンの皆さんなら、こんな質問には答えやすいのではないでしょうか。「今までの事件の中で、あなたが好きだった事件は何ですか?」「○○事件!」「△△事件も好き!」と、いろいろな事件が思い浮かぶと思います。では、少し視点を変えて、こんな質問はいかがでしょうか。「今までの事件の中で、コミックスの最後の1ページが衝撃的だった事件は何ですか?」金田一少年の事件簿では、事件解決後の最後の1ページが、金田一くんのイジられ役っぽいギャグで締めくくられることも多いですよね。あるいは、金田一くんと美雪ちゃんの関係が少し描かれ、「もう付き合っちゃえばいいのに!」と思ってしまうような雰囲気で終わる事件もありました。今回は、そんな数々の事件の中から、「事件全体を読み終えた最後の1ページが、特に印象的だった事件」を3つ選んで振り返ってみます。※この記事では、事件の真相や結末に関するネタバレを多く含みます。未読の方はご注意ください。第3位:「露西亜人形殺人事件」ジッチャンではなく、「自分の覚悟」「ラスト1ページが衝撃的だった事件」第3位は、「露西亜人形殺人事件」です。露西亜人形の事件といえば、地獄の傀儡師・高遠遙一が絡んでいた事件としても印象に残っています。とはいえ、改めて振り返ってみると、高遠が犯人に直接知恵を授けたわけではありません。そういう意味では、高遠が関わった事件の中でも、少し珍しいケースだったのではないでしょうか。では、この事件のラスト1ページを振り返ってみましょう。事件を終え、東京へ戻ってきた金田一くん。そこで出迎えてくれたのが、いつきさんでした。いつきさんが金田一くんたちに見せたかったもの。それは、山之内恒聖の未発表の遺作、「露西亜館 新たなる殺人」という原稿でした。そこに書かれていたのは、金田一くんが先ほど解決したばかりの「露西亜人形殺人事件」にそっくりな出来事。原稿を読み込む金田一くんの姿をよそに、彼がいた公園には、偶然なのか必然なのか、高遠遙一も姿を現します。高遠は、あるルートから金田一くんと同じ原稿を手に入れたといいます。そして金田一くんに対して、「正義感気取りの君に 誰でも持っている心の闇の部分を 少しは わかってもらいたくてね」と語ります。さらに高遠は、解決したばかりの事件の「コンダクター」は、実際に事件を起こした桐絵想子ではなく、ある意味では山之内だったのではないか――という独自の考察を披露します。もちろん、金田一くんは高遠の持論を受け入れません。高遠はそんな金田一くんを見て、「ハイハイ、そうですか」とでも言わんばかりに、その場を去っていきます。その際に高遠が口にするのが、「平行線」そして、「まるで双子の兄弟」という、後のシリーズでも時折使われる印象的な言葉です。高遠を見失ってしまった金田一くん。しかし、ここで彼は、高遠が掲げる「芸術犯罪」に対して、推理で受けて立つという覚悟を新たにします。ここでの決意は、金田一シリーズの定番ともいえる、「ジッチャンの名にかけて」ではありません。この事件のラスト1ページで金田一くんが口にしたのは、「俺自身の…誇りにかけて!!」という言葉でした。「ジッチャンの名にかけて」ではなく、自分自身の誇りにかけて、高遠と立ち向かう。金田一一という人物が、ひとりの探偵として高遠と対峙していく決意を感じられる、非常に印象的なラストだったと思います。第2位:「異人館ホテル殺人事件」取り返しがつかない思い第2位は、「異人館ホテル殺人事件」です。ドラマ版では、初代・七瀬美雪を演じたともさかりえさんの推理が大きく描かれた、非常に珍しい事件でもありました。今回は、コミックス版のラストに注目します。この事件の犯人は、北見蓮子こと、元警視の不破成美。そして彼女が手にかけた人物の中には、実の妹・北見花江もいました。蓮子は花江に濡れ衣を着せ、最後の被害者にしてしまいます。しかし、物語は事件解決だけでは終わりません。数ヶ月後、金田一が訪れた場所事件から数ヶ月。金田一くんは俵田刑事から連絡を受け、久しぶりに北見蓮子と面会します。整形を終え、再び元の顔に戻っていた蓮子。金田一くんが彼女に会いに来た理由は、あるものを見せるためでした。それが、「花江のデザイン会社の社員証」です。ここから、花江が生前どのように生きていたのかが明らかになっていきます。花江は劇団員として活動しながら、東北の小さなデザイン事務所で服飾デザインの仕事を続けていました。その根底にあったのは、「花江がデザインした服を着て、蓮子が女優として舞台に上がること」という、幼い頃に2人で思い描いた夢でした。両親の事故をきっかけに離れ離れになった姉妹。それでも花江は、いつか蓮子が自分を頼ってきたときのために、そして自分自身の夢のために、服飾デザイナーとして、そして劇団員として生きていたのです。花江の社員証を見たことで、蓮子はその事実を知ることになります。自分が殺してしまった妹が、幼い頃の2人の夢を支えにしながら生きていた。その事実に、事件が終わってから気づかされるわけです。最後の1ページに描かれたものそして迎える、最後の1ページ。金田一くんが持っていたのは、事故によって姉妹が離れ離れになる前の、蓮子と花江が一緒に写った写真でした。同じ服を着て、笑顔で並んでいる2人。その写真からは、この後に起こる悲劇など想像もできません。「この時に戻れれば、まだやり直せるかもしれない」そんな思いがあったとしても、人は過去に戻ることはできません。だからこそ、このラストには強烈な余韻があります。個人的には「異人館ホテル殺人事件」は、取り返しのつかないことをしてしまった人間の後悔を描いたラストとして、シリーズの中でも特に印象に残る事件だと思っています。第1位:「死者のチェックメイト」くされまくりコンビによる、静かなる反抗そして、第1位。視聴者の皆さんの中には、「意外!」と思われる方もいるかもしれません。当チャンネルで第1位に選んだのは、「明智警視の優雅なる事件簿」より「死者のチェックメイト」です。このタイトルを見て、「あぁ、アレか(笑)」となった方は、過去の短編集までかなり読み込んでいるのではないでしょうか。実は今回このテーマでネタを考えるまでは、「そういうオチだったっけ?」と思うくらい忘れていました。ストーリーそのものは覚えていたんですけどね。明智警視のロス時代「死者のチェックメイト」は、明智警視がロサンゼルスで活動していた時代の出来事を描いた事件です。明智警視の知人であるチェス仲間の男性が、犯人の手に落ちてしまいます。そこで明智警視は、ロス市警の女性刑事で、明智警視が「ビジネスパートナー」と呼ぶパトリシア・オブライエンと組み、事件の推理を進めていきます。やがて明智警視は犯人の正体を突き止め、真相編で犯人を追い詰めていくことになります。しかし、犯人にはある「協力者」がいました。その協力者が犯人に示したのが、「大きな×(バツ)のメッセージ」でした。ストーリー上の意味としては、「もう無理」といったところでしょうか。そのメッセージを見た犯人は観念し、事件は終わりを迎えます。まさかの「×」が現代にもここからが、このラスト1ページの面白いところです。「死者のチェックメイト」は、メタ的に見ると、明智警視が3年前の事件を金田一くんや剣持のオッサンに語っている形式で展開されています。ところが、要所要所で繰り出される明智警視の自慢話。それを聞かされ続けた金田一くんと剣持のオッサンは、当然ながらウンザリしていきます。そしてラスト1ページ。この2人はまさに、「くされまくり」なコンビになっていました。そんな2人の様子を気にすることもなく、明智警視は話し続けます。特に、ビジネスパートナーにとどまらなかったパトリシアとの思い出を、クールな顔で延々と語る明智警視。ついに耐えられなくなった金田一くんと剣持のオッサンは、その部屋から出ていってしまいます。そして、部屋に残された2人からのメッセージ。それが――「大きな×(バツ)」だったのです。ロスで事件の犯人に協力者が示した「×」が、「もう無理」という意味だったとするならば。明智警視の自慢話&惚気話を聞かされ続けた金田一くんと剣持のオッサンも、「もう無理(笑)」という気持ちで部屋を出ていったのでしょう。改めて読み返してみると、ラスト1ページの面白さだけなら、個人的には今回の3作品の中で一番好きな描かれ方でした。もう一つ気になる「ワインバー」のやり取りちなみに、このラストにたどり着く少し前の描写にも、個人的に気になるところがあります。明智警視とパトリシアの間で、こんなやり取りがあります。「ホテルのワインバーは空いているかな?」「24時間空いているわ」これ、どういう意味だったのでしょうか。単純に考えれば、ホテルのワインバーが24時間営業しているという意味。そう考えれば、朝でも昼でもワインを飲めるということになります。ただ、この事件の序盤には、パトリシアが明智警視と一緒にバーにいるシーンがあります。そこでパトリシアが、「私たち、愛を語り合っているみたい」とも言っているんですよね。そう考えると、「ホテルのワインバーは空いているかな?」「24時間空いているわ」という2人のやり取りにも、何か別の意味が込められているように感じてしまいます。もちろん、ここは当チャンネルとしての解釈ですが、こういう部分まで含めて読み返すと、「死者のチェックメイト」は意外と味わい深い事件だと思います。まとめ今回は、「金田一少年の事件簿で、ラスト1ページが特に衝撃的だった事件Best3」として、3つの事件を振り返ってみました。第3位「露西亜人形殺人事件」→ 「ジッチャンの名にかけて」ではなく、「俺自身の…誇りにかけて!!」という金田一自身の覚悟。第2位「異人館ホテル殺人事件」→ 殺してしまった妹が、自分たちの幼い頃の夢を支えに生きていたことを知る、取り返しのつかない後悔。第1位「死者のチェックメイト」→ ロスで事件を終わらせた「×」が、まさかの形で金田一&剣持コンビから明智警視に返されるという、シリーズ屈指のコミカルなラスト。同じ「衝撃的なラスト1ページ」でも、覚悟・後悔・笑いと、方向性がまったく違う3作品になりました。金田一少年の事件簿は、事件のトリックや犯人だけでなく、事件が終わった後の最後の数コマ・最後の1ページまで読むことで、さらに印象が変わる作品でもあると思います。皆さんは、「ラスト1ページが衝撃的だった事件」といえば、どの事件を思い浮かべますか?