こんにちは。いつもご視聴いただきありがとうございます。金田一少年の事件簿、そして金田一37歳の事件簿の事件感想シリーズ。今回取り上げるのは「金田一二三誘拐●人事件」です。この事件は、『金田一少年の事件簿』としては一度区切りとなる作品で、2022年1月からイブニングで「八咫烏村」の事件が連載されていますが、「金田一37歳の事件簿」開始前としては最後の事件と言えるものです。なお、「金田一二三誘拐●人事件」の作中で登場する地名は、あくまで『金田一少年の事件簿』の世界におけるフィクションとしてご理解いただければと思います。【1】作品のあらすじ授業中に立たされていた金田一くんのもとへ、いとこのフミちゃんが用事でやってきました。内容は「イベントの保護者をやってほしい」というお願いです。実在する地名を舞台にした「新撰組まつり」で、フミちゃんは小学生限定の「子供コスプレ隊」に参加したい様子でした。イベント当日、コスプレ衣装を準備するため一時的に場を離れたフミちゃんが、いつまでたっても戻ってこず、金田一くんと美雪ちゃんは不審に思い始めます。そのころフミちゃんは、謎の仮面の人物によって連れ去られていたのでした。【2】事件の主なポイント今回の事件のポイントを語る前に、まずは謎解きに必要な前提事項を少し多めに整理しておきたいと思います。犯人に関して最初に驚かされるのは、その“珍しすぎる行動”の数々でした。車やスマホに関しては「事前に準備していたのかな?」という程度ですが、誘拐の身代金を金田一くんたちの世界における「警察」に要求してくるという、常識外れの動きも見せています。さらに、この事件ならではの特徴として「新撰組の衣装の関係者に身代金を運ばせる」という奇妙な手法があります。新撰組と同姓同名のイベント参加者たちには、「京王稲田堤駅の南口に集合せよ」「後日また新撰組隊士の衣装を着てこい」「近藤局長以外はパスモを除いて何も持ってくるな」など、犯人を名乗る“沖田総司”から細かい指示が次々と出されていたのです。そして、実際に身代金の運搬を任されたのは、フミちゃんが参加していた新撰組イベントで、“新撰組のメンバーと同姓同名”だった6名の人物たちでした。 永倉新八(ながくら・しんぱち) 近藤勇(こんどう・いさみ) 土方歳三(ひじかた・としぞう) 新見錦(にいみ・にしき) 斎藤一(さいとう・はじめ) 山南敬助(やまなみ・けいすけ)(ポイント1)路線図は覚えなくても大丈夫! 金田一二三誘拐の事件は、「誰がどこへ行ったのか」を追いかけるだけでも相当大変な内容です。私自身、東京の路線に詳しいわけではなく、「渋谷って新宿の近くだよね?」「浅草って山手線の東側だったよね?」という程度の理解でした。とはいえ、鉄道の発車時刻や複雑な乗り換え知識がなくても、ある程度は謎を追うことができます。最終的には、鉄道に関する知識は「無いよりはあったほうが良い」というレベルではありますが、必須ではありません。また、この動画では犯人による細かい指示内容まで扱うことはしません。追い始めるとキリがないので、どうしても詳細が気になる方はコミックス本編を読み返してみてくださいね。強いて一つ挙げるなら、「渋谷から吉祥寺まで1本で行ける電車がある」ということだけ覚えておけば、ひとまず事件の流れを追ううえではなんとかなる…と思います。(ポイント2)吉祥寺駅へ向かう途中の数分間 犯人が新撰組の格好をした6名に指示を出し、それぞれ別ルートで移動させている最中、ついに事件が発生します。途中の駅で、ある人物が金田一くんの動向を把握しており、金田一くんは悟られたため、犯人の指示通りに数分間その駅構内で立ち止まることに。真相編を読んで振り返ると、この「数分間立たせておく」という行動にも、犯人側の明確な意図があったことが分かります。その後、新撰組のメンバーたちは、それぞれ別々のルートを進んだ末、最終的に吉祥寺駅へ集まることになっていました。しかし、ただ一人だけ吉祥寺に現れなかった人物がいて、彼こそがこの事件唯一の被害者。金田一くんが吉祥寺駅で5名の新撰組メンバーと合流しているその頃、剣持のオッサンは渋谷駅におり、すでに被害者を発見していたのです。(ポイント3)カバンの交換とメールの指示 金田一二三誘拐事件の大きなポイントの一つが、カバンの交換です。まず、コインロッカーに入れられていたカバンを入れ替え、その後6人が到着した途中駅では、5名がトイレに入り「本人でさえ交換したのか分からなくなる方法」でカバンのやりとりを行いました。その結果、犯人以外は誰も「どのカバンがどれなのか」を把握できないまま行動することになったのです。さらにその直後、6名は3人ずつ2班に分かれて別方向へ移動します。加えて、犯人が配布したスマホ宛に届くメールでの指示も重要でした。たとえば、・号車をバラバラに指定する・発車ギリギリに降りるふりをして乗り直すよう指示するといったものがありました。これらの行動の意味は、読者の予想通りでしょう。犯人は「カバンの所在と中身を完全に撹乱し、誰がどのルートを通ったか、第三者に推理されにくくする」ために、徹底して混乱を作り出していたのです。(ポイント4)偶然起こった火事 ほかにもポイントになったのが、金田一くんがある駅から別の駅の間で見かけた火事です。この時、金田一くんは「何か関係があるのか」と思っていましたが、結果的にはかなり関係のある出来事でした。そして、この火事と意外なところでつながるのが、電車の中のある荷物です。どこのどんな荷物かはここではお話しできませんが、ある物が犯人のアリバイトリックに使われていました。極めつけは、レンジでチンした焼きいもです。「それが何の関係があるの?」と思うかもしれませんが、金田一くんにとっては、犯人の正体を決定づける情報になっていたようです。また、事件後の新撰組の5名への聞き取りのシーンでは、電車での移動もさまざまだった様子がうかがえます。大抵は、電車で気分が悪くなった人がいて進行が遅れたり、5名のうち1人は「乗る電車を間違えた」と自ら認めたりといった内容でした。とはいえ、東京都内の複雑な路線の電車なら、日常的に起こることの範囲内です。しかし、この聞き取りのシーンを通して、金田一くんは大きな手がかりをつかんだようです。【3】事件のキーパーソン 金田一二三誘拐の事件でのキーパーソンは、「カフェふくろう」のマスターです。詳細はここではお話しできませんので、ぜひ『金田一少年の事件簿R』の14巻のラストまで読んでみてください。この人物の選び方は、『金田一37歳の事件簿』までつながるキーパーソンとして意図されたものでもあります。【4】まとめ(感想/残った謎/今後に繋がりそうな話) 普段は金田一くんの前で強気な態度を見せていたフミちゃんですが、本心を見せる描写が何度かありました。例えば、イベント会場でコスプレ衣装を準備していたときの「ありがとね!はじめ!」 (金田一少年の事件簿「金田一二三誘拐●●事件」より) だとか。 また、フミちゃんが保護された際には、主に金田一くんに対して「ごめん」と言っている場面もありました。この事件の中心人物と言ってもよいフミちゃんに関しては、「金田一37歳の事件簿」でも再登場しているため、最終的に無事だったという点については触れても問題ないと思います。ただし、フミちゃんがどんな場所にいたかを考えると、少なくとも犯人のメインの目的は「フミちゃん誘拐」ではなかったことが分かります。さて、金田一リターンズのころから時折登場している「ある俳優さんに似た鑑識の捜査員キャラ」ですが、この事件でも登場しました。吸血桜では都内、白蛇蔵では東京以外の県、そして今回は渋谷と、短期間で何度も異動願いを出しているのか、あるいは複数箇所にそっくりさんがいるのか、またはタロット山荘の滝下や電脳山荘のワトソンが警視庁に就職したのか、考え出すと妄想は尽きません。今回の事件の動機となった出来事は、金田一二三誘拐の連載当時としては非常にタイムリーなものでした。キーワードとして挙げるなら、動機に関わる人物の名前が「夕月カンナ」という人物です。この名前、そして金田一二三誘拐の事件にも高遠遙一が関わっていたことから、細かく比較してみると興味深い点があります。具体的には、金田一二三誘拐の事件と露西亜人形の事件を比べると、前者では後の犯人と面識のある「夕月カンナ」が動機に関わり、後者では高遠を支援していた「幽月来夢」という人物がいました。どちらも苗字の読みは「ゆづき」で共通しています。また、露西亜人形の幽月は挿絵画家という設定です。作家やクリエイターが本名の当て字で活動する事例は少なくありません。もしかすると、露西亜人形の幽月と金田一二三誘拐の夕月は血縁関係があるのかもしれません。仮にそうでなかったとしても、高遠もこの事件の犯人も「ゆづきという名前の大切な存在を失った」という点で共通しています。高遠はだからこそ、この事件の犯人に対して特別な感情を抱いたのかもしれません。 ちなみに金田一くんは事件後のカフェふくろうで、「ブラック上司だかなんだか知らねーけど俺なら一発で片付けてやんぜ」 (金田一少年の事件簿「金田一二三誘拐●●事件」より) といって「ハゲ上司」と呼ぶ相手に辞表を叩きつけるようなシーンをイメージで再現していましたっけ。これ!金田一37歳の事件簿の第1話で、いきなり実現していないんですよねwww37歳になったブラック企業の主任として働く金田一くんは、上司にペコペコしてばかり。美雪ちゃんの「はじめちゃん、意外にヘタレだから…」という予想の方が、むしろ的を射ていたと感じます。さすがですね。さて、金田一少年の事件簿は、この事件でひとまず一区切りとなります。金田一くんのこの先の20年には何があったのか、そして高遠にもどのような出来事があって独房で本を読む生活になってしまったのか。その辺りが明かされるのは、きっと「金田一37歳の事件簿」「金田一パパの事件簿」の世界になるだと期待しています。